文政8年。
午年の冬から流行った二上り(三味線の二の糸を全音高くした調弦法、そのままの調弦は本調子)よしこの節はこの頃本調子に変えて節が少しずつ変わる。
もっとも江戸で流行って、初めてやって来る。
これは清元延寿太夫追善の歌から流行り、5丁次へ続く。
文政8年酉1月18日から大須門前で鳥の羽細工を披露する。
2匹のらくだの写し、外には揚幕を掛ける。
蛤、ぼたん、猫、虎、扇かけ、さくらづくし、人魚、大字の懸物、看板には象を造る。
口上では京都から江戸へ行った帰りと言うが、実は名古屋の細工だと。
桜天神時の鐘楼の上に怪しい者が現れるとの噂があり、火事に用心する。
2月8日、長者町蒲焼町角の豆腐屋でこたつ布団が燃え、縁の下へ燃え抜いて騒ぎとなる。
堀川の桜渡し舟が中止となる。
東本坊の新堂2階に金網を張る。
2月25日、大須天満宮を開帳する。
今年から神宝を見せる。
神楽、音楽も始まる。
8月25日も同様。
龍泉寺に桜を多く植える。
志主は医師の亀井氏。
3月11日、書肆永楽屋東四郎の土蔵が燃え出し、大騒ぎになるが、直ちに鎮火する。
八事山弘法大師千年忌の練り行列は先年の塔供養と同様。
ほら貝吹きの修験者が4人で、2人はほら貝を吹く。
燕尾をかぶり、小さ刀(腰刀)衆はくくり褌。
3月26日、和泉町中村検校が師藤田匂当の追善を行う。
吹原の庭の藤を見せる。
4月16日は大雨のため、17日に舞楽、18日に祭礼を行う。
東御坊の北広場がきれいになる。
5月5日、熱田中道町が本馬。
他は俄馬。(馬の塔)
先月から天道町清安寺で徳重上人が説法を行う。
くらがりの森で旅の僧が入水自殺する。
5月18日、馬の塔が行われる。
海東郡今宿村はさよ姫の山車を甚目寺に出す。
これには人形からくりがあり、古風で優雅な山車で度々は出さず、100年目に出すとの話もあり、命が宿っていると。
常日頃は村の寺の蔵に入れてあると。
その箱の中でめりめりと音がして騒がしく、その告げで山車を出す。
この山車を出すと大雨になると。
今年もたちまち雨が降る。
奇妙なことである。
人形は白絹の下着に紅の振袖。
今年は馬の上に乗せず、後ろから吊る。
大須の馬の塔も少し出る。
(殿の)見物もある。
宮町あたりの芸者たちから出した祭も評判が良い。
弁慶の人形、その他全て若い者の人形のいで立ちである。
さまざま早替わりの演技をする。
二福神の袋、小鍛冶の狐の面などからくりが出すと。
倹約の触の後、武家の家では芝居を見ることはなし。
町々では女の頭飾りは粗末なものを用いる。
5月19日夜、大須の堂に幽霊が現れたとの噂がある。
熱田の者に娘があり、出産で死んでしまう。
その法事を大須で勤めたが、この娘が法事に現れたと。
怪しい、怪しい。
桜之町天満宮の向かい紙屋某を宿にし、珍しい薬を売る駿州の者がいると。
効能書きにはこれを持っていれば金持ちになり、命が延び、知恵を授かるとある。
6月、裏町で作り物(飾り物)が少し、蓮池を作る。
6月14日、三宅村天王祭で舟祭が始まる。
津島から船を移らせると。如何か。
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