天保8年。
一 8月23日、東懸所南広場南側の土塀は先日5日の激しい風雨でしばらく崩れたままであったが、この日、この土の中から男女2人が死んで埋まっているのを犬がくわえ出して大騒動になる。
男は古渡伊勢山東の半右衛門の倅、女も同町の下女だとも、その家の下女だとも。
この塀は9日の雨で崩れたとも。
男は9日に芝居見物をしていたとも。
他も探していたところこの日死骸を発見したと。
土塀は人が死ぬほど倒れておらず、わずか2間(1間は約1、8メートル)か3間倒れただけなので不思議なことである。
一 近頃14日の暴風を、巳の時(午前9時)に桜の天神の鐘撞鐘楼堂から見ると、辰巳(南東)に一塊の黒雲があった。
雲の中に金色の布袋のような人が立っていた。
それに従ってやって来た風がたくさんの大木を根こそぎ吹き倒した。
この怪物を見た人は3階から落ちて気絶し、しばらくして息を吹き返しこの話をしてくれた。
このことは新御殿の斎朝公に申し上げたと浜野が話していた。
浜野は新御殿御広敷(奥向き)の老女である。
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