元禄5年4月1日。
大工清兵衛という者が牢に入る。
近頃、愛岩の向かい徳林寺では門を樫で新たに作り直したが、その際付き合いのあった清兵衛の腕を信じず仕事を頼まなかった。
そして、他の大工に頼んで完成させたが、清兵衛はこれを大変無念に思っていた。
ある夜風雨にまぎれ、のこぎりを携えてやって来て扉や門柱に16、7か所傷をつけた。
この音を聞きつけた者が中で様子を見ており、門から出て引き立てると清兵衛であった。
町衆がこの事件を扱って酒の上での過ちとしたが、あるそこつ者が町奉行の前でこの話をしてしまい、この如くと云々。