元禄8年3月6日。
辰半点(午前8時)、由右衛門が帰って来て忠兵へ行くと言い始めた。
仔細を尋ねると下の女をやめさせたは私の責任ではないか、その他先日香葛籠を落としたことで迷惑をおかけしたと思うので詫を入れたいと言う。
その他にも忠兵と関係のないことも言い始めると。
人々は皆驚く。
以前、由右衛門と下の女ふじとが仲違いした原因は由右衛門が物を盗んだとふじが言った言わないであった。
もちろんふじをやめさせたは由右衛門のせいではなく、年季がきたからであった。
全てが狂言であった。
忠兵は後ほど出向いて詫びを入れるので、先ず帰るように言った。
このため辛大根や江戸からの取り寄せ品などを持って忠兵はやって来た。
この日源右衛門・弾七にも来るように言ってあった。
手紙を由右衛門には昨晩渡しておいた。
これをも談合のために集められたのかと由右衛門は言った。
(料理など略)
由右衛門はしきりに暇を乞い、また話し始めた。
請人を呼びに遣わされたそうだが何かあったのか、その他にもおかしなことを言い始めた。
由右衛門は文左衛門に言う。
さつを僕の女房に下されるので部屋に来るようにと奥様が仰せになった。
しかし、貧乏であるのでこれは勘弁してもらえないかと言ったと。
おかしなことであった。
文左衛門が昼頃と夕暮れ前に葛籠のことも気にするな、暇など出しはしないと話し聞かせると、安心して奥へ礼などを遣わし、喜び部屋に入り寝てしまった。
文左衛門が思うには、由右衛門はこの2、3日朝夕の食事も進まず、夜も眠らなかった。
葛籠のことなどを苦にしながら少し眠ると、大勢人がやって来て自分を捕まえようとしていると慌てて起き出し、その後ぼんやりしてしまいこの如く。
門の外の人の話もも偽りであった。
ただ下女さつには目がくらんでいた。