名古屋の町は大騒ぎ

名古屋でおこった江戸時代の事件を紹介

何事も度を越してはいけない

宝永2年7月7日。
昼から文左衛門は朝岡甚五右を呼ぶ。
今朝、鱸魚を他からもらったため。
近頃、天鼓(天上で鳴る鼓)が鳴るともっぱら噂になる。
その音などを文左衛門は聞いていなかった。
9日夜更けに聞いたところ天鼓の音ではなかった。
本立寺の常題目(題目を1日中唱えること)の太鼓であった。
世間の人が怪し気な噂を好むのはおかしなものである。
少し前、永安寺筋北側の紙屋伊兵衛が家で能を催す。
これは伊兵衛の世倅信安の病気が完治した礼のためであった。
はなはだ豪華なもので、信安からせいろう(蒸し菓子)を用意する。
名古屋中の菓子屋のせいろうをひとつ残らず調達する。
その行いが度を越していたので、伊兵衛は戸を縛られるが、やがて赦される。