名古屋の町は大騒ぎ

名古屋でおこった江戸時代の事件を紹介

文化11年3月。
大須の門前に見世物として来ていた釜のこと。
この茶釜は85代後堀川院の時代の承久年中に、駿州志多郡大多村の百姓某が石櫃に入っていたのを地中から掘り出し、銘を内一文字と名付けて永くその家に伝えていた。
その後文明年中に京都にそれが聞こえ、東山義政公が御覧になった。
その際、古老の目利きでこれは名誉貞呂の作品であるととして、内一文字釜貞呂と申し伝えられた。
その後159年ほど前から不思議なことがおこるようになった。
釜に水を入れて煮立てると二鳴りして左右に廻った。
釜を火からおろすと蓋が吸い付いた。
蓋に縄をかけて持ち上げても蓋は離れず、中に水が入っているのに音もしなかった。
そこで釜を火にかけると、元のように蓋はとれた。
釜の湯を捨てて空にしても、煮立つ音がした。
釜を火からおろし、湯が冷めても煮立つ音がした。
蓋の鳴る音で天気もわかった。
その他にも不思議なことが色々とあった。
このことが関東に聞こえ、この春江戸表へと運ばれ、両町奉行様で調べても同様であったので上様始め御大名様方へ上覧の運びとなった。
誠に珍しい物であったので、この度当地でご覧いただくこととなった。
御見物の上、どうぞお確かめください。