元禄15年10月12日。
廻状がある。
一筆申し入れる。
六郎様が亡くなられたことでの触である。
穏便のことは昨日までと心得るように。
恐惶謹言。
10月12日 近藤小太夫。
両城代殿。
文左衛門はこの日鈴木七兵衛の家のところを通り過ぎる。
弟善右衛門は乱心で牢に入っていた。
飯はまだか、聞いてくれと板を叩いて叫んでいた。
この者は初めは書院番で、妾もいるような好色・絶倫な男であった。
妾などは鉢坊主を呼び寄せて囲っていたので金が続かなくなった。
意見をしても聞き入れなかったが、金が続かなくなり妾を家から出した。
それを悲しんで乱心してしまったと。
文左衛門は悲し気な叫び声を聞いて色に狂うことを恐れる。
そしてその様子を想像し感じることもあった。